津軽三三爺譚

津軽の昔コ聞でけへ。

第1話:尻尾の釣

尻尾の釣.mp3 - Google ドライブ

むかし、猿と川うそが住んでいた。川うそが、毎日魚をとって食うのをみて、さるはうらやましくて堪らない。ある日、猿が川うそに向かって、
「どへば、そっただに、魚とるに好いば」ときいた。川うそは、
「あの川さシガマコ(氷)張った時、シガマさ穴あげで、その時(じき)やッて引(ふ)っぱれば、何ぼでも捕れらね」と教えた。そごで猿は、いい事をきいたものだと思って、早速川の氷の上に坐って、氷の上に穴をあけ、尾を水に差入れて魚の食いつくのを待っていた。
しばらくすると、猿の尾をびくらびくらと引っぱるので、「さア雑魚一匹食っついだ」と猿は喜んで尚もぢっとしていると、今度は前よりも痛く、びくびくっと尾を引いた。「今度ア雑魚ア二匹食っついだ。あ、三匹食っついだ。あ、四匹食っついだ」と尾が水の中で凍っているのも知らないで、引っぱられる度に勘定しながら待っていると、やがてもう尾が凍りついて、上げられないようになった。
「さア今度アあげでけべア」と猿は尾に力を入れて「ウン」と引き上げたが、尾はぴったりと氷に食いついてはなれない。
「ははア、こりゃ大きな雑魚だな」と喜んで、ウンウンと引き上げると、尾は根もとからぶっつりと切れ、前にのめってころんでしまった。
その時から猿の顔は赤く、尾が短くなったのだ。(西津軽郡鯵ヶ沢町七ツ石の話)