津軽三三爺譚

津軽の昔コ聞でけへ。

第5話:とんびの婿入り

 昔、まだ若い後家様があった。夫が死んでから、寂しくてたまらない。ある天気のいい日、裏に出て空を眺めると、とんびが「ヒョロロー」と輪を描きながら啼いている。
「ああ、とんびでもいいから、連れ合いがほしいな」
とひとり言を言った。
 するとその夜、一人の若い男が訪ねて来て、「私はどこへも行くところがないので、今夜泊めてください」
と言った。後家様は快く泊めてやった。後家様は次の日の朝、男を魚の行商に出してやった。こうして若い男は後家様と夫婦になって暮らすことになった。
 男は行商に行く途中、人のいない所で魚箱を降ろし、中の魚を出すととんびの姿になって、「ボッキ ボッキ」と魚を食い始めた。食い終わるとまた夫の姿になって後家様の所へ帰ってきて、
「今日は皆売れたが、貸しになった」
と言った。
 ある日、いつものようにお寺の杉林の中で、とんびになって魚をみんな食ってしまった時、いつも見ていたカラスが、
「とび殿や、あなたの奥様来ましたね」
と鳴いたので、とんびはびっくりして、
「どうして来るものか、うそばかり」
と答えた。そして帰ってきたとんびの夫は、
「今日もみんな貸しになってしまった」
と女房に言った。女房はどうも不思議でならないので、次の日、夫の後をつけて行って、やっとその訳を知ることができた。急いで先に帰ってきて、釜に熱湯を沸かし、夫が帰ってくると、
「おや、おや、疲れて来たでしょうから、足をあらってください」
と熱湯をたらいに汲んで出した。
「俺一人で洗うから」

と言ったが、女房はむりに、煮え立っている湯の中へ両足をつかんで入れると、夫の足は真っ赤に焼け、「ピョロロー」と一声叫んで、とんびの姿になり空高く飛んで行った。(弘前市